西神戸医療センターだより

1994年に開院した西神戸医療センターは、高度医療、救急医療、結核医療を担う地域中核病院で、休日時間外の救急患者にも24時間体制で対応しています。
 とくに消化器内科では、吐血下血や急性の腹痛といった急性期疾患が多く、救急患者の占める割合が約5割と他科に比べて高くなっているのが特徴です。また、2005年に消化器内科が中心となって組成した栄養サポートチーム(NST)は、全入院患者の治療を栄養面からバックアップしています。(お話は、消化器内科部長 三村純医師)

 

幅広い症例にオールラウンドで対応

三村純医師Q:消化器内科が扱う領域は、とても広いとうかがいましたが、どのような人員体制で対応しておられるのでしょうか?
三村:当科では、食道や胃、小腸、大腸といった消化管系の疾患と、肝臓や胆のう、膵臓などの臓器にかかる疾患のほぼ全てに対する検査と治療を行っています。医師は私を含めて11名が在籍しており、基本的には全員がオールラウンドの知識と技術を備えた上で、それぞれの専門分野で知識や技術に磨きをかけ、1日平均170人の外来患者さんと入院患者さんに対して最新の医療を提供できるよう努めています。
 専攻医と呼ばれる後期研修医が7名所属している若い組織ではありますが、たとえば「腹部エコー検査マスターコース」のような院内独自の資格試験でスキルアップを図るとともに、消化器内視鏡学会専門医、消化器病学会指導医、肝臓学会専門医などの認定を受けたベテラン医師と協力しあって切磋琢磨しています。

Q:昨年は「兵庫県指定がん診療連携拠点病院」にも指定され、がん治療においても地域医療の核たる役割を担っておられますね。
三村:消化器系のがんに限りませんが、がん対策の最大の決め手は、「早期発見・早期治療」です。当院には治療内視鏡の設備と技術がありますから、通常の内視鏡検査はもちろん、早期の胃がんや食道がんに対する粘膜切開剥離や粘膜切除などにおいても、数多くの施術実績を持っています。
とくに大腸腫瘍に対する粘膜切開剥離術に関しては、神戸大学医学部附属病院や神戸中央市民病院などと並び、「高度先進医療の認定施設」として承認されました(2010年)。神戸大学の先生のセミナーに参加したり、当院で扱っていない心臓外科などの患者さんを中央市民病院に紹介したりといった、知識交流や医療連携も行っています。

 

治療や回復を促す「栄養」のチカラ

Q:大腸の粘膜切開剥離術は、ほかの消化器官の手術より難しいのですか?
三村:実は、大腸の粘膜はとてもデリケートでしてね。厚さにすると胃壁の半分くらいしかありません。皆さんが召し上がっている牛肉や豚肉をイメージしてもらうとわかりやすいと思いますが、ミノ(胃袋)は厚くてしっかりしていますが、ソーセージの皮(腸)は透き通るような薄さでしょう? 人間も同じで、腸の薄い粘膜を傷つけずに剥離を行うには、高い技術や豊富な必要です。
仮に腫瘍が切除できたとしても、腸壁に穴が空く「穿孔」になってしまうと、腸内の老廃物が内臓に漏れてしまい、重篤な合併症を引き起こすこともあるんです。

Q:急性期疾患の場合も入院手術の場合も、治療後に安定した状態を保ち、いかに早く退院させてあげられるかが重要な課題ですね。
三村:現在、当院の消化器内科に入院された場合の平均在院日数は10~11日。手術に耐える体力づくりのため、あるいは予後を良くするために、栄養面でのサポートは欠かせません。そこで組織したのが栄養サポートチーム(NST)です。
もともとは、胃瘻造設(食物や水分や医薬品を流し込むために腹壁を切開して胃内に管を通すこと)後のケアについて管理栄養士らと集まって意見交換していたのが始まりでしたが、現在は医師、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、言語聴覚士、歯科衛生士、臨床工学技師、事務職員が所属する総勢80名近い大所帯になりました。
健康な方は「栄養」と聞くと口から摂る栄養=食事 のことを意識されると思いますが、消化器内科の患者さんは、食事が出来る状態の方ばかりでもありません。たとえば、胃瘻造設による「経管栄養」や点滴のような「静脈栄養」といった形もあります。また、喉を手術するなどして嚥下(飲み込むこと)障害が出ている場合の食事やリハビリについて相談するようなこともあります。

 

幅広い症例にオールラウンドで対応

Q:いわゆる「チーム医療」を実践されているわけですが、チームワークを高めるために工夫しておられることはありますか? また、チームならではの良さは何ですか?
三村:メンバーが集まって定期回診を週1回、それぞれの専門分野から意見を交わしたり症例検討を行ったりするミーティングを週2回の頻度で行っています。また、NST内の広報チームが隔月で発行する「NST新聞」を読んで、直近の活動を振り返っています。
 チーム医療の良いところは、何と言っても科や職種を越えた多角的な視点から患者さんを診ることができるという点ですね。今や、どの科の診療においても、チーム医療は欠かせないと思います。とくに急性期のように瞬時に的確な判断を下さねばならない場面では、いかに“死角”のない総合診断を下せるかどうかが肝心。地域の急性期病院で働くということは、命を救えるという喜びが大きい分、責任の重い仕事だと実感しています。

Q:最後に、今後の目標についてお聞かせください。
三村:西神中央は、1980年代半ばに市営地下鉄が開通したニュータウンでしたが、今は高齢化が進んできました。それに伴ってがんを患う方も増えてくるでしょうが、早期発見ができれば不治の病ではありません。どの患者さんにも来院時点でベストの治療を提供できるよう診断能力を磨くとともに、地域の診療所や介護施設などの各施設、あるいは大学病院や市民病院との連携を、さらに強化していきたいと思います。

ありがとうございました。

 

 

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